積立NISAから未来を創る

積立NISAは結局、得になるの?それとも損?

積立NISAは知っている人だけが得をする制度

積立NISAを利用して実際に積み立て投資をしている人、検討している段階で二の足を踏んでいる人、殆ど概要を知らない人など、様々な状況の方がいると思います。その人の抱えている環境や経済状況も人それぞれ違います。ただ、結論から言うと、積み立てをしている人が得になるどころか、知らない人や実行しない人はかなり損になります。それも何百万円単位という金額でです。
その理由を以下に説明していきます。

理由1  政府は問題がある制度は勧めない

積立NISAは小額投資非課税制度とも呼ばれ、国民に家計金融資産の向上を促す大切な政策です。

この制度を国民に広く勧める背景には、先進諸外国と比較して預貯金の比率が大きく、経済活動の恩恵が資産の向上に寄与していないとの指摘が以前よりありました。

その結果生まれたのが、積立NISAの前身であるNISA口座です。『貯蓄から投資へ』をスローガンとして掲げ、投資への推進を図った金融庁ですが、2014年1月から実際に運用を始めたNISAには当初想定していた若い方の加入が少なく、設立前から投資を行っていた高い年齢層に偏っていました。

その問題点を解消して、今まさにこれから投資を始める個人にも対象範囲を広げ、長期に渡って継続的に積立投資に加入してもらいたい政府の意図もあり、積立NISAが2018年1月より新規設立されました。

 

上記の資料は、金融庁が発表している平成27年(2019年)事務年度の金融レポートです。2015年に米国、英国と金融資産構成を比較しています。この3カ国の中で日本は突出して預貯金の比率が高く、株式投資等は低いことが統計上分かっています。

 

 

そうなんだ!日本は安全資産の預貯金が沢山あって良いと思うけど、実際はどうなのかな?

 

 

本当ね〜!半分は現金・預金が占めているのね。

 

 

 

このグラフでは、95年を起点として上記3カ国の家計金融資産の伸び率を表したものです。日本は2015年までの20年に渡って、金融資産があまり伸びず低調に終わっています。

この様な統計を踏まえ、各国の金融資産の状況を鑑みて、広く日本の国民全体に少額投資制度という形で投資を一般に浸透してもらおうと試みています。

政府が推進するに当たり、国民に損をさせる様な仕組みはまず作りません。積立NISAは将来の資産形成のメリットを享受出来るよう収益に対する税を優遇しています。

 

 

教授、税の優遇措置はどの様になっているのでしょうか?

 

 

本来、投資収益の20.315%掛かる税金が積立NISAの適用期間では免除されるんだよ。政府の支援金とも言えそうだね。

 

 

利益の100%が受け取れるのは嬉しいな。

 

積立NISAの原型はイギリスにあり!

NISAはもともとイギリスのISA(Individual Savings Account=個人貯蓄口座)をモデルとした日本版ISAとして、NISA(ニーサ・Nippon Individual Savings Account)という愛称が付けれられました。(金融庁より)

英国の ISA は、1999(平成 11)年、低い貯蓄率を解消するために政治的リーダ ーシップの下、その前身である PEP(Personal Equity Plan:個人持株制度)と TESSA(Tax Exempt Special Savings Account:免税特別貯蓄口座)を整理・統合 することにより導入されました。現在では、幅広い英国居住者に利用され、人気が高くブランド化された貯蓄・投資に係る制度として認知されています。
(出典:金融庁)

イギリスでは当時、経済不況の影響で低い貯蓄率に悩まされていました。そこでその低い貯蓄率を解消する為に、免税措置を盛り込んだISA制度を1999年に設立しました。

設立された当初は暫定的な措置であり、ISAの運用期限も決められていましたが、現在では恒久的な制度となり広く英国民に認知・支持されている貯蓄・投資制度です。

英国ISAの現在は、国民の資産形成手段として広く周知されています。また、英国成人人口の約半数がISA口座を保有して貯蓄・投資習慣の定着に寄与しています。

 

 

積立NISAは元々、イギリス生まれだったんだ・・・。

 

 

現在の英国では一般的に認知されて、高い評価を得ているんだよ。制度もより使いやすく変更を重ねているんだね。

 

 

日本で投資が増加しなかった理由は、バブル崩壊後の株価下落が印象に残り、投資に踏み切る人が多くいなかった事実や一般的な家庭では株式等にわざわざ投資しなくても銀行の預金だけで十分な金利を得る機会に恵まれた経済事情がありました。

しかし、世界経済も国内状況も変化している、この様な時代だからこそ、自助努力、自分の将来の資産や年金は自己の責任において準備せざるを得ない時代に突入しています。

先にも紹介させて頂いた、イギリスにおいての手本となるISAが同様の取組みとなり、とても参考になるでしょう。

 

 

理由2 投資期間が長期に及ぶほど得をする

長期の投資がもたらす2つの効果を紹介します。一つは長期になるほど投資結果は一定の水準に収斂していくこと。もう一つは、積み立てによる購入価格の平準化を図ることが出来ることです。

まず、先の効果である収益の収斂ですが、投資銘柄を長く保有するほど長期では一定の収益率の水準を確保しやすくなります。反対に言えば、短期において収益が上下に振れやすいことを意味します。

出典:金融庁 平成27事務年度 金融レポート

上記のグラフは、85年以降の各年において国内外の株式・債権に分散投資を行い、売却せずに保有継続した効果を保有期間5年と20年で比較したものです。

明らかに、長期保有の方が収益率の幅を狭めています。重要なことは、保有期間が20年になるとマイナスに陥った年が無かった点です。これは、積立NISAを20年間、途中で諦めずに続けるとプラスになる可能性が高いことを示しています。

 

もう一つの積み立てによる購入価格の平準化について見ていきましょう。この方法はドルコスト平均法とも呼ばれ、積み立て投資において効果を発揮する購入手法です。

この積立投資の代表的な方法は、定期的にあらかじめ決めておいた一定額を投資するだけの誰にでも真似の出来る簡単な方法です。

これは、株価が暴落する様な経済の最大危機において、より安価な単価で買い付ける事が出来るため、長期積み立ての視点で考えた際には最高の投資環境がやって来たと捉えることもできます。

現在までに世界の経済は様々な不況を乗り越えて来ました。2000年以降においてはITバブルの崩壊、記憶に新しい2008年のサブプライムローン問題を発端としたリーマン・ショックなど、近年もたびたび不況が起きています。

積立を売却する際には起きて欲しくない経済不況ですが、その不況の時こそ積立投資が本領を発揮する素晴らしいチャンスとなります。と言うのは、投資信託の基準価額が下がり平均購入単価も下がる状況では、不況を脱した時には大幅に利益の積み増しが期待出来るからです。

この不況の時にもっと下がるのではないかと焦って売却してしまい、損益を確定してしまったりするのは非常にもったいない事です。しっかりと長期のビジョンを視野に入れて積立を継続する人が大きな利益を確保出来るのです。

 

 

毎月、同じ株数を購入するよりも、決まった金額で購入する方が良いんですね。

 

 

そうなんだ。感覚的には同じに見えるけれど、一定の金額であれば相対的に平均取得単価を低く抑える効果が期待できるんだよ。

 

 

危機が大きければ、その後の反動も大きく上昇するんだね。

 

 

理由3 日本にいながら世界経済の成長拡大を金融資産に反映できる

日本の戦後の高度経済成長は世界の中でもまれに見る成長率を見せ、世界中から称賛の声が上がりました。人口の増加を伴って、世界中を席巻していました。

しかし、現在の日本における環境は変化し、人口減少と高齢化社会が到来しています。これの意味するところは、経済の高い成長性を将来も望むのは非常に厳しいと言うことです。

ただ、グローバル化が進んだ現在では、世界の株式等に投資する環境が整っています。積立NISAも商品によっては世界の経済成長に投資することも可能なので、これを利用しない手はありません。

総務省 政策白書 30年度版

上記のグラフは、総務省が発表している主要各国の実質GDPの推移を表しています。この数値からも読み取れる様に日本の将来の経済成長率は横這いから他国の様に上昇することは難しい事実を突きつけています。

 

 

この様にグラフ化すると将来の日本は大丈夫かしら・・・。

 

 

だからこそ、自分の将来の金融資産を守るために知識を高めて、少しづつでも世界に投資する行動が大切なんだよ。

 

理由4 周りが積み立て始めた後で慌てて初めても時間を取り戻せない

初めての投資は勇気が入ります。しかし、積立NISAによる投資は初心者の方でも利用し易いメリットがいつくかありますので、ポイントをまとめてみました。

メリット1 一度設定したら継続するのに基本的にほったらかしで良い

メリット2 最初から大きな金額は必要ではなく、少ない金額から始められる

メリット3 いつでも積み立て投資を解約して資金を手元に戻せる

メリット4 複利の効果を発揮して雪だるま式に投資資金が増える

メリット1 一度設定したら継続するのに基本的にほったらかしで良い

積立投資は非常に手間の掛からない手法です。投資対象の銘柄・頻度・金額を最初に決めてしまえさえすれば、確認は年に数度程度でも問題ありません。

これは、投資に割ける時間が取れない方にとっては、非常に利用しやすい投資方法と言えるでしょう。

メリット2 最初から大きな金額は必要ではなく、少ない金額から始められる

証券会社によっては、100円の投資金額から始められるところもあります。出来れば少ない金額から徐々に慣れていく事をお勧めします。

 

 

 

100円から気軽に投資が始められるんだね。

 

 

投資する証券会社により、投資金額が異なるそうよ!

 

メリット3 いつでも積み立て投資を解約して資金を手元に戻せる

同じ様な小額投資が可能な制度として、確定拠出年金があります。こちらは年金制度設計がされている為に60歳まで原則として途中で引き出すことは出来ません。

積立NISAであれば、例えば自宅購入の頭金にしたり用途を限定せずに利用用途が拡がります。用途に応じて使い分けると使い勝手が向上します。

メリット4 複利の効果を発揮して雪だるま式に投資資金が増える

複利効果は運用利益を元本に再投資することで、利息が利息を生んで雪だるま式に資金が増加する効果の事を指します。ただ、最初のうちは思った様に加算されません。年数が経るほど大きく向上します。

投資においての積立の継続は、投資の利益をさらに投資に回す事で貯金より多くの資産を殖やすことが出来ます。もちろん、投資は元本保証がなくリスクを背負っていますが長期に渡って成長する市場に投資をする事でリスクの少ない投資を実践出来ます。

投資においては、購入や売却をするタイミングが非常に重要となります。もし、未来の株価を的確に見通す事が出来れば、間違いなく資産の山を築く事が可能でしょう。

しかし、実際は多くの機関投資家のプロにおいても、株の値動きを予測して売り買いのタイミングを測るのはとても難しい事なのです。

投資経験が浅い投資家が上手に資産運用をするには何が必要かと言うと、プロでも難しい投資を始める時期を検討するよりも投資時期の分散を図り、より長く継続する事がとても大切になります。

積立効果をシミュレーションしてみましょう

 

 

まとめ

貯蓄から投資にスローガンを掲げて推進する理由は、将来の年金受給金額や資産を自分自身で準備し、未来に向けた個人の資産を少しでも底上げする為です。自助努力を促す為に税金の負担を無くして、より多くの方を資産運用に導いています。

しかし、諸外国に目を向けると先進国と言われる国々では預貯金より投資に対する比率が高く、投資からの利益も日本より享受出来ている事実が政府の統計より発表されています。

この積立NISAの制度を知っているか知らないか。あるいは、利用するか利用しないかで10年後、あるいは20年後にとても大きな資産金額の差となって現実に現れて来るでしょう。

準備は今からでも遅くはありません。情報を知り、行動を起こそうと考えた日に実際に実践する事が大事なのです。この記事を読んだ事が動機となり、明日からではなく今日から自分自身の将来の為に準備を進めることが重要です。

将来、自分自身やご家族が金銭的に困る事の無いようにファイナンシャル・リテラシーを向上させ、より良い老後を迎える為にも積立NISAをぜひ活用してみましょう。

積立NISAは、まだ始まったばかりの制度ですので、英国のISAの様に利便性向上の為の制度改善を促し、全国民が享受出来る良い資産形成手段になっていく事でしょう。