投資信託は大きく分けて、インデックス投資とアクティブ投資に分類出来ます。どちらも投資の商品として販売している以上、特性は異なるものの利益を追求する目的は一緒です。
では、どちらの投資信託を選択すれば良いのでしょうか?インデックス投資とアクティブ投資の特徴を比較・検証してみたいと思います。
投資の世界の大きな潮流
何十年も以前の投資の世界ではアクティブ、つまり基本的には投資を購入する銘柄を選択して購入する方法が一般的でした。その様な情勢の中で、1973年にバートン・G・マルキール著『ウォール街のランダムウォーカー』が出版されます。そして程なくして1975年にジョン・C・ボーグル氏が世界初の個人投資家向けのインデックスファンドを販売したバンガード社を設立します。
当時の投資家からの批評は散々で、平均的な利益を追求する意義があるのかと『ジョン・C・ボーグルの愚行』とまで言われました。それほど市場平均の利益を目指すインデックスファンドに対する世間からの評価は非常に低かった様です。
しかし、批判的だった投資家も徐々にインデックスファンドの有用性に着目して少しづつ資金を増やし、バンガード社の資産運用額は今ではブラックロック社に次ぐ世界第2位の規模にまで発展しました。これは、幾多のアクティブファンドが設立されては消えていく運命にあるものとは対照的に、確実に年々資産運用総額を増やし続けています。
また、投資の神様と称えられるウォーレン・バフェット氏は2013年度の『バフェットからの手紙』でアメリカの市場平均であるS&P500に連動するインデックスファンドの購入を妻の相続への信託として勧める内容となっています。以下にその一文を引用します。
この様な投資を取り巻く状況から、今後も多くのインデックス投資への資産が増えていく事が予想されます。
それぞれの投資の特徴と比較
長期視点のインデックス VS 短期視点のアクティブ
インデックス投資は日経平均やS&P500などの株価指数に追従した値動きの投資となります。前提として、その市場(世界経済等)が発展を続ける限り一時的な値下がりはありますが成長を続ける投資法となります。ここが非常に重要で、どんなに世界経済が不況に見舞われても長期の視点に立てば必ず経済は発展を遂げる事を条件としています。
日本においては人口減少の影響で経済規模の縮小も考えられますが、世界経済は人口も増え続け、それに伴って市場経済も規模の拡大がほぼ確実に見込まれます。その様な株価指標に照準を合わせれば、投資した資産も世界経済の様にほぼ確実に利益の積み重ねの恩恵を受け取る事が出来ます。
それに対してアクティブ投資はファンドの投資方針に則り、利益を追求します。中には非常に良いパフォーマンスを上げるアクティブファンドもありますが、投資方針が経済の方向性と異なってしまうと一転してパフォーマンスが上がらなくなる事も考えられます。また、途中でファンドマネージャーの人選が変わり、ファンドの方向性が変化する事もあるようです。
先にも示した、『ウォール街のランダムウォーカー』の中ではアクティブ投資の戦績の詳細な統計が載っています。それによると、アメリカでの過去の8割のアクティブ投資は市場平均に勝てない事を明確に示しています。また、アクティブ投資は市場平均より上回る利益を上げられるか事前に確認する手段はありません。
アクティブ投資にも良い部分はあって、その時代の流れに沿ったテーマの銘柄を上手に組み込めば、市場平均より高いパフォーマンスを得る事が出来るメリットもあります。ただ、そのテーマは流行を追いかける様なもので、長期でのリターンを望むのはなかなか難しい側面もあります。
手数料の観点から見ると断然インデックス
利益を圧迫する手数料は少ない方がいいに越したことはありません。基本的に市場平均の株価指数に追従するインデックスは手数料は低く抑えられ、投資対象を選定するアクティブ投資の手数料は割高となりがちです。手数料を超えるほどのパフォーマンスが出ていれば何も問題ありませんが、パフォーマンスも市場平均より低く、手数料も割高なアクティブ投資は投資対象から外しましょう。
積立NISAが始まる以前の投資信託の環境はあまり良いものとは言えませんでした。というのも、信託報酬料も高く、購入時手数料も掛かる投資信託が多く見られたからです。今は投資家にとって購入時手数料の掛からないノーロード型投資信託等が増え、より良い投資環境が整いつつあります。
長期のインデックス投資は銀行より安全?
日本人の多くの人は銀行にお金を預けます。それは元本保証があり、損失を回避出来る理由からでしょう。しかし、その銀行に預ける行為も時にはリスクになる場合もある事を知っていますでしょうか。
今は歴史的な超低金利政策で、何年資金を預けても得られる利息はとても微々たる金額にしかなりません。何十年預けても今の利率は引出し手数料で元本を割り込んでしまうかもしれません。また、銀行は会社の利益を確保する上で厳しい社会情勢に立っていて、将来に渡って店舗数・社員数の削減や銀行口座の管理手数料の費用を利用者に負担する事も検討しています。
経済については今後、インフレに誘導する政府によって物価の上昇も考えられます。もし仮に2%づつ物価の上昇が継続したと仮定した場合、20年後の貨幣の相対的価値は70%にまで値下がりしてしまいます。例えば1,000万円の資金を銀行に預けていると、20年後には実質的に700万円の価値に縮小してしまう事を意味しています。
そういった事も考えていくと、預けるだけで年々価値が少なくなる可能性を含んだ銀行より、年率5%程度のインデックス投資の運用であれば2%のインフレ率を上回り、損失を回避する可能性の方が高くなります。